大型映像とは
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作品ガイド
Bugs! 〜昆虫たちの不思議な物語〜
私たちの地球は・・・、昆虫の惑星だった!
舞台は、ボルネオのジャングルの奥地に残された今にも倒れそうな小屋。物語の主人公、アゲハチョウの『パピリオ』とカマキリの『ヘロジュラ』が登場し、それぞれの誕生、そして成長を、時にユーモラスに人生の物語として語られてゆきます。そして、彼らは巡り合わせとして人生の一瞬を交差させることになります・・・花の蜜を吸って楽しんでいたパピリオが、忍び寄ってきたヘロジュラに捕われ命を奪われてしまうのです。しかし、映画は、パピリオが無駄に死んだのではなく自分の役割を立派に果たしたことを非常にわかりやすく伝えてくれます
・・・そして最後に、私たちは、大自然の摂理、何ものにも代えられない命の気高さを味わい、心が温まるような勇気を得ることがきっとできることでしょう。パピリオとヘロジュラの物語の合間に、天敵との関係、体の機能、食事、不思議な完全変態、オオカブトムシの決闘、虫の歩行、擬態など、熱帯雨林の昆虫のさまざまな生態を、あたかも私たち自身が昆虫になって目撃する体験をしますが、それはまるで宇宙人と遭遇したかのように人間の生活圏とはまったく異なる神秘的で驚きに満ち溢れた世界を味わうことになるでしょう。
上映時間・・・・・  約40分  2D・3D作品
監督・・・・・・・ マイク・スリー
プロデューサー・・ フィル・ストレザー、アレグザンドラ・ファーガソン
製作総指揮・・・・ ジョナサン・バーカー、ピーター、フダコウスキ、サイモン・レルフ
声の出演・・・・・  はな
配給・・・・・・・  灰&Dピクチャーズ
*プロダクションノート*

はじめに

この映画の企画は偶然の出来事から生まれました。ロンドンに本拠のあるPrincipal Large Format 社の社長で、本プロデューサーのフィル・ストレザーが、1998年に七歳と十一歳になる二人の甥っ子を訪ねていったとき、二人は恐竜と昆虫の本に熱中していました。ストレザーは二人が恐竜に興味を持つのはよくわかりましたが、一人が、「虫ってなんだか格好いいね、おじさん」と言い、もう一人も負けずに、「ねえ、ほら、これを見てよ、まるで宇宙人みたいだよ。」と言いながら、叔父の鼻先に串刺しになった昆虫の一団を差し出したのです。そう、驚いたその瞬間、彼は子供たちの昆虫への熱中ぶりをつぶさに感じ取り、昆虫についての大型映像を制作することを思いついたのです。

1999年9月に開かれた大型映像GSTA年次総会で映画館側の積極的な反応を得て、ストレザーとその大型映像チームの監督マイク・リー、制作者であるアレックス・ファーガソン、それに共同制作者である、ティム・ウェルスプリングと共に企画を立ち上げ、そして実際にプロジェクトが動き出したのでした。

ストレザーは後にトロントにあるSKフィルムの最高経営責任者で制作責任者でもあったジャナサン・バーカーに接触し、この大型映像を制作し世界中に供給して貰うことになりました。バーカーは熱意ある返答をしてくれました。「私はその話を聞いて一瞬の内に,『Bugs!』が視聴者を引き込む大変魅力的な映画であることを理解しました。過去五年間に及ぶ3D映像の着実な成長の中で、『Bugs!』は真の成功を収めることでしょう。」





出資への協力

当初ストレザーはこの映画を短編として思い描いていました。ところが財界の関心の高さが、短編映画を即座に規格最長である40分映画へとスケールアップさせたのです。以下の五つの有力なIMAX上映館(カナダのIMAX社の大型映像を上映する施設)が早い段階で投資を確約しました。合衆国首都ワシントンのスミソニアン自然史博物館、ニュー・オリンズのオードゥボン協会、ガルヴェストンのムーディ・ガーデンズ、シアトルの太平洋科学センター、それから、英国のアットマーク・ブリストルです。後に追加で、英国の映画協会や映画テレビ制作会社から英国普通株が寄せられたのです。

害虫駆除で世界をリードするターミニクス社も、『Bugs!』に熱意ある協賛者となってくれました。「ターミニクス社は本計画に打って付けの会社です。この会社は、虫たちを有益な存在だと強く信じています。ただ、家の中は例外だと言うだけなのです。」とバーカーが言うと、ターミニクス社の販路拡大の副責任者であるスティーヴ・グッドも、「私は、地球環境で昆虫の果たす役割の重要性を人々に広めるために、この映画の協力者として我が社の名を列ねて頂くことを光栄に思います。我々はこの映画が、現在の、そして将来の観衆に我々の価観を伝えるための風変わりでユーモアのある試みであると確信します。」と話されました。

映像制作者たち

映画制作のために編成された強力なクリエイティブ・チームの中にあって、熱帯雨林の同じ場所で生まれた蝶とカマキリ、これら二者の断片的なエピソードを物語へと転化するという考えを共に思いついたのが、監督のマイク・リーと共同執筆者のアビー・アロンでした。「一方は食べる側、もう一方は食べられる側である、カマキリと蝶のめくるめく生活を追うことにより、劇的な緊張感を生む一方で、大変教育的でもあるという構成が可能になったのです。」ストレザーが記しています。
バーカーは付け加えます。「我々は映像の巨匠たちを呼び集めたのです。そのチームは英国のImage Quest 3-D 社の、極微の世界から壮大な景観までの両方を見事にこなせる専門家であるピーター・パークが率いました。彼は撮影機器の設計でオスカーを二度受賞していて、『Bugs!』制作に当たって全く新しく光学機器を設計したのです。彼は、立体映像撮影者としてしられ、本作品の写真監督を務めたショーン・フィリップとも協力し合い作品を作ってゆきました。
キャスト

スリーは何故カマキリと蝶が主役に抜擢されたのかを説明しています。「カマキリの首は昆虫としてはちょっと普通ではない動き方、つまりそれはぐるりと回転し周囲を見回すような動きが出来るのです。それはあたかも人が状況を把握するときにやるような、外環から情報収集する様子を彷彿とさせるところにおいて、特別な存在だったのです。

このカマキリ抜擢を決定づけたのは、配役に関する打ち合わせの最中に偶然起こったちょっとした事件でした。そのカマキリはスリーの正面のビンの中にいたのですが、スリーが持っていたペンを揺するが早いかカマキリは頭をくるりと回転させて両目の焦点をペンに固定しました。て彼は攻撃態勢に入りながら両の前肢を上げはじめ、じっとにらみ付け、次の瞬間には襲いかかったのでした。「それは薄気味の悪い一瞬の出来事でした。彼はそれで自分の役柄を獲得したのです。」とスリーは回想します。「カマキリは、また、見てくれも最高なんです、つまり昆虫が持っている特殊性をたくさん観察させてくれるのですね。複眼を持っていて、脱皮もしますし、また肉食だから劇的な場面作りにも役に立つんですよ。」

「青虫が蝶へと変貌を遂げるのは当たり前の話なのですが、それでもやはり自然界でのもっとも驚くべき現象の一つはまさしくこの完全変態でしょう。我々はこの現象のすばらしさを余すところなく大画面に描き出したかったのです。そしてまた、カマキリと蝶は最終的には避けて通ることの出来ない結末でも、うまく立ち振る舞ってくれたのです。」とスリーは言います。

共同執筆者のアビー・アロンは付け加えます。「我々は、昆虫たちをその生活の中で完璧な好対照として描きたかった。それを実現することによって作品を見てくれる方々に、この作品は身近で、かつ大層面興味深いものになったと信じます。カマキリは素晴らしい個性を持っています。滑稽な振る舞いもするし、複雑で唖然とさせるような仕組みまで持ち合わせています。一方蝶は、驚くべきメタモルフォーゼを行い、また虫の世界では、いやらしく仰け反るようにして威嚇するカマキリと比べると、実に魅力的で愛らしい。素晴らしい教育が出来るのです。」

その他の出演者たちはと言えば、いずれも海外から輸入したものかあるいはボルネオの現場で捕獲したものかのどちらかです。その内のいくつかの例を上げますと、ヤスデ、コガネグモ 、竜頭コオロギ、肉食コオロギ、大ゾウムシ、ハキリアリ、ワグラー毒アナヘビ、コーカサスオオカブトムシ、ムル虫、サソリ、ドリオオトカゲ 、ハナカマキリ、ツノゼミ 、カレハカマキリ、ナナフシ、サカダチコノハナナフシ、サシガメ、などです。


ボルネオでの撮影

新旧世界の熱帯雨林を両方とも調査してみて、スリーは、芸術的、また実践的な観点からマレーシアを選び取りました。そしてマレー半島を視察中、彼は自分の気に入ったどんな場所ででも、「ボルネオの方がもっと良いですよ。」という声を聞いたのです。彼は次にその赤道直下の島へと出発し、島の北側を見て回り、東マレーシアのサラワク州から三つの場所を選び取りました。一つは州都に近いクチン、一つは南シナ海のリゾート地であるサンタボン、そしてもう一つは彼がそれまで見た中ではもっとも美しい国立公園の一つであるムル国立公園の中心部です。

年間降水量120インチという、ボルネオの手つかずの雨林の青々とした環境は、うっそうとした外観と夥しい量の虫たちを供給してくれました。「唖然とさせられるような熱帯雨林の広がり、野趣溢れる生活、普通では考えられない文化や歴史の混淆などはさておき、また虫たちのことも脇に置いて、サラワクで撮影隊にとってもっとも有り難かったことは、そこに住む人々だったのです。」と制作者のアレックス・ファーガソンは記しています。英語の出来る現地の案内人が密林への行き来を容易にしてくれるばかりではなく、以前は首刈り族として、またどう猛な戦士としても知られた現地でもっとも大きな部族であるイバン族が、我々の撮影中を通してかけがえのない手助けをしてくれたのでした。

昆虫の生活史の撮影としては大きく、四十人にまでもふくれあがった、『虫たちー熱帯雨林の大冒険』の大型映像撮影隊を、イバン族の12人が助けてくれたのです。ボルネオの熱帯雨林の中での六週間にわたる撮影の間、彼らは機材の設営、豪雨の演出、機材の持ち運び、木登り、食事の用意でしてくれ、また密林に関するいくつかのことを不案内な我々に教えてもくれたのでした。

もっとも大切は舞台は、ベースキャンプのそばの、マタン国立公園内の沼の辺に設営され、当初どのように不可能だと思われるような状況下の仕事も、なんとかやり遂げることが出来ました。主役やエキストラを一時的に収容する動物園が建てられました。カメラのための足場が組まれ、熱帯雨林の天涯の中を駆け抜けるカメラを動かすクレーンや照明もクアラルンプールから運び込まれました。「当たり前の、でも満足の行く戦術である。」とファーガソンは記しています。

この沼の辺の舞台設営のために、美術監督ニジェル・ポロックはボルネオで放置されていた小屋を見つけて買い入れ、それらしく仕立てて現場に立てたのですが、地元の竹や椰子の葉を使ったり硬質の木材で補強したりしました。そう言うわけで高いところで天涯の役割を担う植物は小屋の一部と融合し、ポロックはあたかも木が小屋に倒れかかっているかのように見せたのです。「倒れた木は破壊の爪痕を残すのですが、この先いつの日か森が小屋を覆い尽くしてゆくのだという印象を与えるのです。」と、土着の草木で現場に生命の息吹を吹き込んだポロックが言います。人間の不在で長らく放置されていた小屋は、この物語の主人公たちの住処になったのです。
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虫の飼育係と昆虫研究者

小屋を虫で充たすべく、虫の世話役であるワーウィック・ヴァーディと昆虫研究者であるギリアン・バークは、サラワク州政府の許可を得て、現地にて実に広範囲にわたる昆虫の収集を行いました。夜間には明かりを使った罠を、また落とし穴を仕掛け、彼らの目に留まるありとあらゆるものを藪の中に追い求め、この二人組は瞬く間に出演者たちを獲得しました。注意の呼びかけは日々おきまりの儀式となりました。「蛇はひどい噛み方をするし、ムカデは貴方を病院に入院させることも出来ます。」とワーウィックはワグラー毒アナヘビを注意深く扱いながらにやっと笑います。

ボルネオでの撮影を終えたとき、虫たちのあるものたちは自然へと戻されたのですが、サラワク州政府の輸出許可と英国の輸入許可を申請し、二人が長旅に耐えうると思った虫たちは英国へとれたのでした。ペナンの蝶園から頂いた蝶も含まれるこれらの虫の中には、黄色や赤色の脚を持つヤスデ、朽ちた樹木に見事に擬態するtrilobite beetles 、カレハカマキリ、ハナカマキリ、大ゾウムシ、それにコーカサスオオカブトムシもいました。これらの中でもっとも長い旅をしたのは、『あご』とあだ名が付けられた肉食のコオロギで、ボルネオと英国で働いた後、サラワクに送り返されて、森の中に逃がされたのです。スタジオの他の虫たちはすべて昆虫保護協会へと送られ、そこを通して各地の動物園や他の公的な展示施設や昆虫の飼育者たちへと分散されて届けられたのです。


挑戦の日々

ボルネオでは雨が最大の問題でした。「熱帯雨林で仕事をするに当たって、我々はあらかじめこのことを知っておかなければならなかったのだと痛感しました。夕立で川は水かさを増し、機材をずぶぬれにしました。二、三度我々はすべての照明とともに機材をみんな流されてしまったのですが、その中にカメラが入っていなかったのは幸運でした。」とファーガソンは回想します。

熱帯雨林へと進むこと自体は簡単なことなのですが、摂氏30度で重くて扱いにくい三次元撮影機材を運ぶのは容易な作業ではありませんでした。ムルには、総計350パウンドもある撮影機材と周辺機器類がかつぎ込まれました。滑りやすい丘を登り、重い機材を低く構えなければならないような、コウモリであふれかえる洞窟へ入って行くと、ひらりと身構えるアナヘビ、ムカデ、サソリ、蜘蛛などの毒を持った外敵への対応がまた一つの厄介ごととなりました。


とりわけ大型映像にとって問題だったのは、熱帯雨林の中ではすべてが暗い緑色だったことです。立体の大型映像用の映写機を使うためにはかなりの明るさが必要なために、会社はマレーシアの本土の方から手に入るすべてのHMI照明器具を持ち込まなければなりませんでした。機材は、ひと揃いの電気技術者と二つの巨大な発電機と共に到着しました。「これは自然界の中のちっぽけな生き物の本能的な動きを捉えるという部分では通常採られる方法とは違ったものでしたが、何と言っても巨大な画面なので一筋縄ではいかないのです。」とスリーが明言します。

場所がほとんど赤道の真上であるということが、もう一つの問題をもたらしました。日の出と日の入りという撮影者にとって魅惑的な「マジック・タイム」は、たったの三十分しかないのです。お日様は地平線からひょいと顔を出すと、空の上へと一目散に上って行くのです。朝食までにはもう撮影にとって魅力のない高さにまで上がってしまいます。また日が暮れるときも同じで、ほんの数分の美しい光景を見せただけであっという間に太陽は姿を消してしまいます。つまり、ムルの夜明けとでも呼ぶべき典型的な美しい映像を獲得するには、撮影隊は前夜に現場へと赴かなければならず、五時間も掛けて山の頂に撮影機材を設置しなければなりませんでした。撮影隊が五時半の日の出のために三時に山へと出発するまで、隊の夜警が機材を問題のないように保守しました。「我々はこのような撮影を『奉納』と呼びました。」とファーガソンは言います。

蛭、サソリ、コウモリ、蜘蛛、蛇、ワニなどは現場を共有した動物たちの一部ですが、彼らの内の何名かには、『Bugs!』の主役の一員になってもらいました。「我々は熱帯雨林を過酷で教訓的なものだと覚悟を決めていたのですが、現地に入って数日経つ内に、イバン族の道案内や現地のスタッフの支援も相まって、我々はその森が実に不思議で、また豊かで、それにわくわくするような魅惑に満ちた場であると感じるようになったのです。『Bugs!』の監督として私の任務は、自然の肌触りと密林のすばらしさを視聴者に伝えることだったのです。」スリーは言います。

スタジオでは

英国に戻り、オクスフォードに近いウィトニーの人工的なスタジオで、湿気でもうもうとした青葉の生い茂る熱帯雨林の縮小版を再現するのはたやすいことではありませんでした。「虫たちが自分たちの物語を最後まで演じきるのを接写するのにふさわしい舞台を作る必要がありました。」とスリー。例の小屋はまたしても分解されてボルネオの原生林から船で運ばれたのです。本物の沼の辺と英国でのセットとの間に持続性を持たせるために、スタジオは生きた植物であふれかえり、本物のさざ波や、熱帯の気温で満たされました。撮影隊は熱と湿気の気候の縮小版の中で十二週間働いたのですが、それはさながら実際の熱帯雨林の中での仕事とほとんどかわらないくらいに大変なものでした。

「虫の飼育係たちは、虫当人たちを除けばまさしく物語の本物の主役でした。」と監督は飼育係を持ち上げます。彼らは、日々必要とされる撮影場面のために、出演者が元気で準備万端であるように周到に用意をし、各々の責任をちゃんと全うしました。それぞれの場面は綿密に組み立てられていて、一年前に完成していた原稿が映画の成功に結びつくことは出資者と上映する映画館に確約出来るものになっていました。飼育者は、一つ一つの場面の撮影で、必要な同種の動物や昆虫が少なくとも二頭以上確保されているように常々気をつけていたのです。何と言っても虫たちは強烈な明かりのもと、なおかつ僅か二、三分カメラが回っている間に、合図にあわせて自分の役割を、それも可能ならば二度三度と演じ直さなければならなかったのですから。「何日か経つうちに私は彼らがそれほど人間とかわりがないのだと認識することになりました、つまり彼らの行動は総じて食べ物と繁殖に規定されていたのです。どの場面撮影も、この虫は何を食べたくて何を食べたくなくて、またどのように繁殖をするか、という虫たちの都合に翻弄され続けました。虫の良い点はと言えば、金銭について余分の要求をしないと言うところです。」とスリーは笑います。
自然の振る舞いは、『Bugs!』を語る上での鍵になります。」スリーは語ります。

今までに作られたもっともユニークな昆虫の映画だと私が思うこの『Bugs!』を作る上で、忍耐こそが秘策でした。我々は計画し、準備をし、待ち望み、来る日も来る日も同じ場面をやり直しました。その報酬はこの長時間の豪華なショーであり、我々はかつてほとんどかあるいは全く人の見たことのないいくつかのシーンを3Dの大画面に収める恩恵に浴したのです。つまりそれらは、カマキリの一団の誕生、十一時間にも及ぶ青虫の蛹化(ようか)、十日間の蛹生活を経た蝶の羽化の一部始終などです。撮影隊はまたアリが雨水のしずくを飲んでいるところ、カマキリが蠅を捕まえているところ、それに蜘蛛が無防備に近づくコオロギを罠で捕らえようとしているところなどもカメラに収めました。ほんの一瞬のために、何ヶ月も計画を練り、何日も準備に費やし、そして何時間もただただ待ち続けたのです。

ファーガソンは同意します。「基本的にこれは待機というゲームなのです。ツノガエルがゴキブリを食べるというような場面のために平均で三時間も費やしたのですから。そして、スタジオの中で我々を前にして起こったもっとも驚くべき瞬間はカマキリの誕生でした。」

バークが付け加えます。「私たちはカマキリの卵がある一点から孵化し始めることを知るまでに二週間もの間観察し続けました。しかしそれでも私たちは最初のカマキリがひょっこり姿を現すまで一体いつになったらそれが起こるのか、全くわからなかったのです。それほど孵化は予告もなしに始まったのです。」

最新の技術

スリーは虫の視点で世界を描く映画を作りたかったのです。その目標実現のために、特殊撮影の専門家であるピーター・パークは3D映像撮影のための新しい方策を考え出しました。二つのカメラがピーター・パークの鏡に据え付けられて、この映画で初船出となったのでした。小さな鏡がこの巨大な撮影機材の前面で使われました。この鏡の装着は映画撮影家であるショーン・フィリップをして、背景を驚くほどくっきりと浮かび上がらせた状態で、信じられないくらいに昆虫を接写することを可能にしました。この新しい、小さな鏡と潜水鏡使用によって、観客が映画を見るとき彼らは自分たちが科学ものの観察者であるよりも、彼ら自身が昆虫世界の一員になったように感じるのです。


複雑な電動制御の出来る撮影機材は三トンもの重さがあり、通常一つの大聖堂を照らし出す明かりよりも多くの照明を備えているですが、そのような大がかりな機材が焦点を合わせなければならないのは、ここではときとして郵便切手ほどの大きささえもなかったりしたのです。スタジオの中でこのことが意味しているのは、撮影するためにサングラスを掛け、産業用の空調設備を持ち込んで室内気温を下げ、またいくつものより小さな空調機に分担させて機器、虫たち、要員たちを別々に冷やさなければならないということです。

パークが試みたのは、縦27メートル、横38メートルもある画面を蠅の目のイメージで埋め尽くすことでした。それによって一万片もの小さな世界が見え、また被写体の回りをカメラが飛び回ることで、映像を見る側があたかも自分が飛んでいる虫になったような気になれるのです。「カメラをなめらかに飛ばせるためには頭上に、極めて精確に設計されたレールを敷かなければなりません。主人公はときには画面の上に二十五万倍にも拡大されて映し出されるので、ほんの微細な振動でさえ、この倍率では地震のように見えるのです。」とパークは言います。

パークのシステムは二つのカメラを使い、双方とも同一方向へと走り、レンズは小口径の広角、一つの鏡は幅がたったの一センチであり、光を僅か10%しか透過しないほど精緻に表面には銀鏡反応が施されています。その小さな鏡は被写体である昆虫に気づかれることなく忍び寄る事が出来ました。システムはたったの一インチの間隔を保って葉柄の間を滑ることが出来、そのことで視聴者は主人公と同じ世界にいるのだと感じることが出来るのです。二つのカメラは完璧に連携した同期撮影を可能にしました。
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パークが説明します。「ボルネオにおける3D映像撮影は二つのカメラを必要としました。左目のカメラと右目のカメラであり、大きな分光器が文字通り二つのカメラを二十インチの幅で分かつのです。そんなわけで、監督が、この葉とあの葉との間に入ってカマキリに忍び寄りたいと考えたときに、セットの中に巨大な撮影機材を突き出させた状態でどうやってやり遂げるのかは実に悩ましい問題でした。」彼はこの問題を、切り立った葉や群葉や昆虫からカメラ本体を遠ざけられるようなひょろ長いレンズシステム、つまり潜望鏡を活用することで克服したのです。彼はこの方法を、分光器なしでやり過ごすことと、四分の一インチ幅の小さな鏡を使うことで改善し、監督をして、連続性を殺さずにきちんと焦点のあった小屋を背景に含んだ画面の中にカマキリを全体の半分の大きさにまで捕らえさせることに成功したのでした。

爪よりも小さなものを画面に壮大に描いてみせる接写技術で、初のアカデミー賞を取った、Optical Zoom Bench と呼ばれる巨大な装置を操りながらパークは言います。「僅か二ミリ幅の穴の中を飛ぶことも、画面を一万片の複眼の面で埋めることも、またカマキリを戦艦と同じくらいの大きさに見せることが出来ました。カマキリが襲いかかるとき、その補食用の前肢は視聴者の鼻先をかすめ、視聴者は恐怖におののくことでしょう。」

ストレザーは言います。『3D映像には、観客に頭痛を起こさせたり、また観客の鑑賞に堪え得いものになったりしないように、何はやってよく何はやってはいけないかというような、独自の込み入った原理があるのです。我々は立体写真家で写真監督のショーン・フィリップを雇って複合的なコンピューター・プログラムを使ってこの点に注意を払って貰いました。

「立体写真は3D映像の芸術です。」とフィリップは言います。「我々が二つの目を使って世界を見るように、三次元映像は観客の見る視覚的世界に奥行きを与えるのです。『Bugs!』は、3D映像の新しい形を代表します。画面が実に大きいことで視聴者は実際に映像に熱中することが出来ます。『Bugs!』は鼻先から無限の世界への広がりを創造します。画面そのものはもはや消え失せ、観客と映像の間には何の障壁も存在しなくなります。この映画『Bugs!』の創作の目的は観客を他の方法では見ることの出来ない世界に導くことなのです。そんな深い一体感によって、初めて観客はその世界とそこに住む動物たちに共感し、またそれらを理解することも出来るようになるのです。

3D映像として、『Bugs!』は膨大な数に上る撮影上の新趣向を提供します。フィリップが説明します。「基本的に、我々が世界を見るとき我々は通常は平均で2.5インチ離れた二つの目で見ています。このことによって我々のほとんどは、六インチよりも近いところにあるものを肉眼で見ることが出来ないのです。焦点を合わせるのが困難であるからばかりではなく、六インチより近いところのものを我々の目は立体的なイメージとして掌握出来ないからです。この映画のほとんどの場面は、この六インチより近い世界で起こっていることを捉えているのです。このような近接で三次元映像を人間の目で見られるように、撮影機材の二つのレンズも、人間の両目の間隔よりもずっと近づけて設置する必要がありました。七つの異なったカメラ用機材が持ち込まれ、その多くがパークによって撮影される映像のために設営されたのです。6フィートから1ミリメートルまでのどの間隔にでも設定できるようになっていました。


照明

照明の工夫は美学的にはとりわけ目に見えないものです。「10マイルから0.5インチまでと大きさに幅がある中で、視聴者を完璧に本物の自然の居住空間へと誘えるような雰囲気を創出したかったのです。」とフィリップが言います。難しかったのは照明を使って別の場所なのに全く同じ場所で撮影されたかのように見せることでした。実際には、かたやボルネオの熱帯雨林の中で撮られたものであり、かたや英国の人工的な強烈な明かりの中、室温調節された舞台で撮られたものをつなぎ合わせたものであったのですが。


監督の狙い

この映画に関して私の念頭にあったものは、まず第一に、昆虫の各々の性質に合致した物語を創作し、映像に物語としての雰囲気を与えることでした。私はこの映像の中に人間的な感情と同時に教育的な理念を投入したかった。私は、カマキリと、やがて蝶になる青虫という主人公たちの人生を通して視聴者を旅へと誘いたかったのです。

あなた方は彼らの世界に入って行き、誕生から死までの熱帯雨林の中での彼らの人生を共に生きるのです。

私はまた3D立体大映像の経験と、物語の両方が面白いものになるように工夫しました。枝や根っこの絡み合う中をカメラが進むとき、映像は現実そのものになります。物語は、驚き、陽気さ、恐怖、そしてまた悲しみというように、劇場効果を生む主要な要素を網羅しています。

私自身とアビー・アロンによってなされた最初の台本は、どのような映画になるべきかについて綿密に練られたものでした。何故ならば場面場面について前もって計画しなければ効率よく撮影ができないので当然のことでした。しかし現実に我々の目の前で自然が動き始めると、その劇的さに我を忘れ、原稿も間合いの取り方なども投げ捨てて、ただただカメラを回し続けたのです。一分間に何千ドル分も!

特筆すべきは、カマキリの孵化と蝶の羽化です。それが実際に始まったとき現場に居合わせたすべてのものにとって魔法の様な出来事だったのです。何百という、小さな、白いカマキリの一齢幼虫は卵鞘からげ出すようにして、糸のようなもので滑り落ち、新たなる世界へと、のたうち回るようにしながら突き進んで行くのでした。我々は誕生という狂乱の真っ最中、一個一個のカマキリの個体がもがいているときにカメラを回したのです。しかし多分もっとも驚くべき場面は、蛹から蝶が羽化する場面でしょう。我々は一度、一分半の中断なしの撮影で、蛹に起こる最初の亀裂に始まり英雄的な奮闘を経て美しい蝶への羽化に至る、この非常に珍しい歩みのすべてをカメラに収めることに成功したのです。その間中制作チームとスタジオのすべてが“パピリオ”の愛称で通っていた青虫が、蝶として新しい門出を迎えるのを、固唾を飲んで見守ったのでした。

音楽

スリーの狙いを聴覚的に高まるように、作曲家のジョン・ランが『Bugs!』の世界を詩情溢れる音符に載せて描きました。「虫たちにそれぞれの役割を与えることで、実録としてではなく、ドラマとして制作したかったのです。」と、よりよい音を求めんがために70人編成のロンドンのオーケストラを指揮したランは言います。

終りに

「あらゆる年齢層の子供たちがこの映画を楽しむでしょう。ごく少数の過敏すぎる人たち、風呂場に蜘蛛がいるだけで叫び声を上げるような人たちはさておき、あらゆる年齢の人たちがこれらの素晴らしい虫たちの姿に熱狂するのを私は目の当たりにしました。大型画面の妙味は人々を肘掛け椅子に腰掛けながらにして、彼らの誰もが実際には行けないような世界へと連れて行ってくれるところなのです。」とストレザーは言います。


「『Bugs!』は視聴者を巨大画面の上で昆虫たちの小さな宇宙へと運んでくれるのです。」と、以前3D IMAX 映画「Into the Deep」で大変な成功を収めたバーカーが言います。私は、『Bugs!』が「Into the Deep」の成功を再現するようなあらゆる要素を備えていると思います。理由は、私の以前のあの映画「Into the Deep」は貴方を、別世界へと連れていったのですが、その中でカリフォルニアの海岸沖の海藻が、3D IMAX だけが出来る仕方で視聴者を魅了したように、私は『Bugs!』が同じことがするものと確信があるのです。

スリーは同意します。「この小動物の生活史の映像を最後まで見たことは、私の映画制作経験の中でも、どきどきするような経験でした。一枚の葉について演出された小さな場面が大画面では生と死の壮大なドラマにさえなるのです。信じられないような昆虫の肢や目や口の詳述は昆虫の世界を不思議な宇宙人のようにさえ映しだします。貴方が通常一度見たとしても二度見ることのない昆虫たちが、もっとも複雑で美しく、そして時には貴方がほとんど出会うことのない様な粗暴な生き物としての正体を現すでしょう。」

スリーは次のように総括します。「映像の中で真のスターだったのは虫たちです。最終的に彼らはオスカー賞に匹敵するような演技を見せたのです。」

終り




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