寒い彼
私は、昔の彼氏の浮気を常に疑っていた。
何故かと言うと、「常にモテていないと嫌」だという考えを持っている男だったからだ。 外面が良く女の子に異常に優しい。
加えて外見も悪くないので、実際結構モテていた。 「福山雅治に似てると言われた」とか「美容室のお姉さんにカッコイイと言われた」とか、嬉々として話していた。
そんなわけだから、私は彼を常に怪しんでいた。 そしてある時禁断の方法に出てしまう。 携帯のメールチェックだ。 そしたらまあ、出てくる出てくる! 元カノとは未だに頻繁に連絡を取り合っているし、後輩と思しき人物はいやに馴れ馴れしいし、極めつけは変なハンドルネームの得体の知れない女。 当時流行りだったエヴァにかけたのか知らないが、登録されていた名前は「レイ姫」。 それだけでも鳥肌ものだったが、やり取りしている内容はもっと寒々しかった。
「今宵の姫は何をなさっておられるのでしょうか?」「愛しい王子の夢を見ておりました」みたいな感じで、もうついていけなかった。 でもそのメールだけでは実際に会っているのかどうかまでは分らなかった。 シロでは無いとしても、クロかどうかは微妙なところだった。
携帯を片手にさっそく彼を追求。 「このメールは何!?」 「それは…、なんでもねーよ!てか勝手に見んなよ!」 「メールを勝手に見たことはあとで謝る。今はこっちの話が先よ!」 「メールメールってうるせえな!なんでもねーよ!」ここで彼に携帯を奪い取られる。
そして バキッ!!! 彼が自分の携帯をぶち折ったのだ! 「なんでもねーって言っただろ!」 まさか自分の携帯を壊すとは想像していなかった。 それほどヤバイものだったのか。 彼のあまりの豹変振りと形振り構わなさに「これはもうクロだな…」と確信し、別れを決意したのだった。
付き合っていたら、こんな感じで力技で問い詰めて、納得いかなければそれでいい。でもこの人と結婚していたらと思うと正直ぞっとする。というのも、結婚してしまったら一方的に別れることはできないから。たとえ相手が不倫をしていても、証拠がないと離婚はできない。
興信所を使うという手もあるが料金はやはり高い。
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